杜を訪ねて

神社めぐりと出会った獅子・狛犬たちへの想いについて。また、時にはモノローグも。

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八朔の雪―みをつくし料理帖

 本書は、高田郁さんの連作小説(みをつくし料理貼)の第1巻にあたります。

☆☆☆ 
 主人公の澪(みお)は、8歳の時に両親を淀川の決壊による事故で亡くし、放浪してつい屋台の食べ物に手を出そうとして店主に足蹴にされているところを、大阪の名料理屋「天満一兆庵」の女将お芳に助けられる。その天満一兆庵で女衆として働き始めた澪は、ふとしたことからその味に対する感覚を主人嘉兵衛に買われ料理の道に入ることになる。それから5年後、天満一兆庵が隣家からの貰い火で焼失し、澪は主人夫婦と、若旦那佐兵衛が働く江戸店を頼ってくるが、佐兵衛は吉原通いで莫大な借財を抱えこみ消息を絶ち、店も人手に渡った後であった。心労のため、嘉兵衛はお芳と佐兵衛のことを澪に託して亡くなってしまう。
 納骨からの帰りに、澪は「化け物稲荷」として荒れ放題になっていた神社に出会い、その神狐に幼馴染の野江の面影を見て、人が祟りを恐れて近づかない化け物稲荷の掃除を始める。そんな澪に唯一声をかけてくれた種市は、17で無くなった娘つるの姿を澪に重ね、自分の蕎麦屋「つる屋」で働かないかと誘う。

 こんな形で物語が始まるが、大阪と江戸の食べ物や風習に関する違いに澪は戸惑う。そんな澪に「つる屋」の常連である小松原は辛口の批評をする。澪はどうしたらよいかわからずに、小松原に教えを請うが、小松原は自分で考えろという態度を崩さない。しかし、澪はそんな小松原の来店をひそかに心待ちにしている。 化け物稲荷で澪に声をかけた医師の源斉は、澪をやさしく見守り、時にはアドバイスを与えてくれる。向かいのおかみさんのおりょう・その亭主の伊佐三・息子の太一らにも助けられながら、澪はお客においしいものを出そうと毎日悪戦苦闘する。

 種市が腰を痛めたため店の料理を任された澪は、他の料理屋にまねをされたりしつつも評判の料理を作り、ついには料理番付の関脇に載るが、その後に度重なる不幸が襲う。そんな澪に吉原の妓楼の料理人又次からもたらされた意外な人物からの文とは…。
☆☆☆


 澪のような芯の強い女性が好きです。 [丸顔に、鈴を張ったような双眸、ちょいと上を向いた小さい丸い鼻。下がり気味の両の眉。どちらかと言えば緊迫感のない顔で、ともに暮らす芳からも「叱り甲斐のない子」といわれている。] という澪ですが、こと料理に関しては自分に妥協を許さずに、おいしいものを作るために工夫し続ける姿勢は「ガンパレ~!!」と感情移入してしまいます。小松原の旦那からは「よう、下がり眉」と言われる澪ですが、私も奥さんから「たれ眉」と言われますので、そんなところにも親近感が沸くのかもしれません。

澪の名前は澪標(みおつくし)からきているようです。澪標とは、川の河口などの航路の安全の為のしるべの事です。本書の副題の「みをつくし料理帖」からも伺える様に、澪がよりお客様に喜んで貰える料理を作って行く為に、その身を尽くす事と重なるかもしれません。

 澪はある時、意外なことから易者に「雲外蒼天」の相と言われる。「頭上に雲が垂れこめて真っ暗に見える。けれど、それを抜けたところには青い空が広がっている。」という意味だそうで、人生には苦労は耐えないが、その苦労に耐えて精進を重ねれば、必ずや真っ青な空を望むことができると教えてもらう。その際、もう一人の登場人物は、まさに天下取りの相「旭日昇天」の相と言われ、その場ですごい評判となるが、その後の2人の運命は…。これからさらに、澪には難題が待ち構えているようですが、何とかはねかえしてほしいと思います。

 本書は、各章ごとにサブタイトルとして澪が苦心の上作り出した献立が示されているが、巻末にそのレシピも乗せられているので、一度お試しになられてはいかがでしょうか?ぴりから鰹田麩、ひんやり心太、とろとろ茶碗蒸し、ほっこり酒粕汁,どれもおいしそうですよ~。

続巻として今のところ3冊(計4冊)出ていますが、次の巻の発売が待ちどおしいシリーズです。


八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)
(2009/05)
高田 郁

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市井小説にはまってます

歴史小説、特に市井(しせい)小説をよく読みます。
市井小説とは、武士ではなく庶民生活について書かれた物で、人情溢れる内容のものが多いのです。

好きな作家は、平岩弓枝さん、宇江佐真理さん、北原亞以子さん、松井今朝子さん、高田郁さん、牧南恭子さん、山本一力さんなどです、女性作家が多いのは、女性の視点から書かれた物の方が、より生活に密着していて、江戸の日々の「匂い」の様なものが感じられるからです。

それにしても、あの時代の人びと、特に長屋のおかみさんというのは、何であんなにパワフルなんでしょうか?
朝から亭主の尻を叩いて働きに行かせ、家の掃除・洗濯・炊事・子供(今と違って3人も4人も)の世話をしつつ、自分も仕事をしたりして、その上「井戸端会議」にも盛り上がる余力があるなんて凄いの一言です。「肝っ玉母さん」というイメージがぴったりです。

男性陣では、武士の場合でも、親の代からの浪人や不浄役人と言われた同心、または小普請組だったりして、決して権力者側の立場ではなく、庶民側に立ったものの見方をして、人情に溢れているのを感じます。例え剣が強くても、それをひけらかす事もなく、町民の中に自然と溶け込んで、周りから一目をおかれる存在になっているのは頼もしい限りです。

それに対して、権力を傘にきて商家に小遣いをせびる岡っ引き、悪徳高利貸し、与太者、男をたらしこむ悪女、業つく者など、対極となる味のある脇役が話を盛り上げる欠かせない役割を担っています。

また、結末が必ずしもハッピーエンドとは限らなくとも、次に向かって前向きな何かが余韻として残るのが、読後の清涼感をもたらしてくれ、江戸の庶民の底力をひしひしと感じます。
もちろんテレビの水戸黄門みたいに勧善懲悪、最後に「カッ、カッ、カッ!」 (東野英治朗さんの黄門様が一番好きでした。)と終わるのもいいですけどね。

最近の作家さんでは、前述の高田郁さん以外にも、木村由香さんや森山茂里さんなど新しい方がどんどん出てきていただくのはうれしい限りです。

最後に御大・平岩弓枝さんが神社の娘さんだというのはご存知ですか?
東京の代々木にある代々木八幡宮の宮司の娘さんなんですね。ちなみに今の宮司は平岩さんのご主人だそうです。





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